個人学習塾の開業は、教育に関心のある方や教えることが好きな方にとって魅力的な選択肢です。
しかし、個人学習塾の開業は決して簡単なことではありません。
大手学習塾の競争や少子化の影響、入試傾向の変化など、さまざまな困難があります。
本記事では、個人学習塾の開業が難しいと言われる理由や開業の流れを紹介します。
また、個人学習塾経営に失敗しないためのポイントについても解説するため、興味のある方はぜひ参考にしてください。
個人学習塾の開業が難しいと言われる理由
近年、個人学習塾の開業はますます難しくなっていると言われています。
個人学習塾の開業が難しいと言われる背景には以下の3つが関係しています。
- 大手学習塾が強い
- 少子化
- 入試の変化
それぞれの背景を以下で確認してください。
理由①:大手学習塾が強い
個人学習塾の開業が難しいと言われる1つ目の理由は、大手学習塾が強いことです。
個人学習塾では集客力や教育力で大手学習塾に勝つことは困難と言えます。
大手学習塾は、名前にブランド力があり、集客のための予算も豊富です。
また、カリキュラムや教材、進路指導や模試、指導法などを統一しており、質の高い教育を提供しています。
生徒を集めるためには大手学習塾に負けない魅力が必要になるため、個人学習塾の開業は難しいと言われているのです。
理由②:少子化
2つ目の理由は、少子高齢化により顧客となる子どもの数が減少している点です。
総務省統計局によると2021年時点の小中生の数は約1500万人で、40年連続で子どもの数が減少していることが報告されています。
少ない子供を各塾で取りあうことから、生徒集めが困難になるのです。
今後も子どもの数が減少していくことが予想されるため、学習塾の経営はより難しくなる可能性が高いです。
参考:統計局ホームページ/統計トピックスNo.128 (stat.go.jp)
理由③:入試の変化
3つ目の理由は大学の入試方法の変化です。
2021年に大学の入試形態がセンター試験から共通テストへと移行されました。
加えて、今後の大学共通テストでは記述式問題が導入される見込みもあります。
個人学習塾は、入試に合わせた学習の提供が必要となりますが教材やカリキュラムの開発、更新に多くの時間や費用がかかります。
また、生徒の進路希望や学力レベルに応じた指導も必要となるため学習の個別化や柔軟性が求められるのです。
今後、個人学習塾もこうした入試方法の変化に対応しなければならず開業が難しくなるといわれていています。
学習塾を開業するまでの流れ
これまで学習塾の開業が難しいと言われる理由を見てきました。
学習塾を開業する際は、さまざまな失敗が懸念されるため、開業に必要なステップを正しく進めていくことが必要です。
学習塾の開業は以下の5つのステップで行うのがおすすめです。
- ステップ①:コンセプトの作成
- ステップ②:市場の分析
- ステップ③:物件の取得
- ステップ④:開業に必要な届出の提出
- ステップ⑤:開業・集客
それぞれのステップについて詳しく確認します。
個人学習塾の開業を検討している方は参考にしてください。
ステップ①:コンセプトの作成
塾の教育方針や目標、対象層、カリキュラムなど、塾の強みとなるコンセプトを作成します。
たとえば、大学進学に特化した塾やさまざまなカリキュラムを提供する塾など、塾によっても強みは異なります。
コンセプトを作成する際には、自分の経験や専門性を活かしたり、他の塾と差別化したりすることで塾に独自性を持たすことが可能です。
コンセプトが明確になれば、塾の強みをアピールできるだけでなく、教材や教員の選定もスムーズになります。
ステップ②:市場の分析
次に、塾を開業する周辺に住む生徒数や塾数などの市場調査を行います。
市場調査は、インターネットや電話帳などで行うことができますが、できるだけ現地に足を運んで実際に見て回ることがおすすめです。
- 塾数が少なく生徒数が多い地域を狙う
- 塾数が多くても自分の塾と異なるコンセプトや対象層の塾が多い
- 自分の塾に興味があるかどうかを生徒や保護者に直接聞く
上記の調査を行うことで塾にどの程度の需要があるか、どのような競合がいるかを把握できます。
市場の分析によって生徒の集めやすさや競合数を把握することが可能です。
ステップ③:物件の取得
次に必要なのは、教室となる物件の取得です。
塾の物件を選ぶ際は以下のポイントを押さえてください。
- 駐車場の完備や大通りに面しているなど生徒が通いやすい
- 広さや間取りは、自分の塾のコンセプトや生徒数に合っているか
- 初期費用だけでなく毎月の家賃もかかるため、運用コストも考慮する
ステップ②で行った市場の分析結果を元に塾経営に適した場所を選んでください。
また、物件の契約には敷金や礼金などが必要です。さらに、塾として使用するために改装や設備の導入が必要になる場合もあります。
塾を開業するために必要となる費用は一定額以上を用意し、事前に見積をしておくと良いです。
ステップ④:開業に必要な届出の提出
開業に必要な届出を自治体に提出します。
開業時に必要となる届出には以下の書類があります。
- 開業届出書
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請
- 棚卸資産の評価方法の届出書
- 減価償却資産の評価方法の届出書
- 消費税課税事業者選択届出書
- 新規適用届出
- 被保険者資格取得届
- 被保険者異動届
開業に必要な書類の届出を怠ると税金や社会保険料の支払いができなくなったり、罰則を受けたりする可能性があります。
各自治体の役所に訪れて、開業に必要な書類・届出を確認してください。
ステップ⑤:開業・集客
塾の開業後は、生徒を集めるために集客に力を入れることが大切です。
生徒を集めるためには以下の集客方法がおすすめです。
- チラシやポスター、ホームページ
- 学校や地域のイベントに参加して塾の存在感を高める
- 無料体験授業やオープンキャンパス
- 紹介制度や割引制度などで既存生徒から新規生徒を増やす
塾のコンセプトや強みを活かして集客方法を検討してください。
塾経営に失敗しないためのポイント
塾経営に失敗しないためには、下記3つのポイントを押さえることが大切です。
- 綿密な事業計画を立てる
- IT化を取り入れて業務の効率化を高める
- コストを最小限に抑える
それぞれ詳しく解説します。
綿密な事業計画を立てる
塾経営に失敗しないためには、塾の強みや目標、競合分析、市場調査などを行って綿密な事業計画を立てることが必要です。
- どのように生徒を集めるか
- どのようなカリキュラムや教材を提供するか
- どのような料金設定やキャンペーンを行うか
事業計画が明確であれば、塾経営の方向性や目標がはっきりし実行力や改善力が高まります。
また、事業計画は金融機関や投資家から資金調達をする際にも必要となるため、綿密な計画を作成するようにしてください。
IT化を取り入れて業務の効率化を高める
塾経営を成功させるためにはIT化を進めて業務の効率化を図ることも大切です。
授業予約システム、オンライン授業や動画配信サービスの提供などIT化を進めることで、生徒にとっても学びやすさにつながります。
また、IT化を進めて塾の業務効率化を進められればスタッフの削減や人件費の抑制が可能です。
IT化にはコストや時間がかかるため、まずは自分でできる範囲や必要な部分から始めることをおすすめします。
コストを最小限に抑える
学習塾を開業する上でコストを抑えることも重要です。
生徒数は季節や時期によって変化するため、塾の収入は不安定となります。
もしもの場合に備えて工夫を行い、コストを最小限に抑える必要があるのです。
たとえば、家賃や光熱費などの固定費を下げるために、自宅やレンタルスペースなどを利用することでコストを削減できます。
塾経営の安定性や利益性を高めつつ、教育の質とのバランスを考えながら適切な節約を行うことが塾経営成功の秘訣です。
学習塾の開業に必要な資金
学習塾の開業には、下記2つの資金が必要となります。
- 初期費用
- 運用費用
塾の開業を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
初期費用
初期費用とは、塾に必要な物品の購入や部屋の借り入れなどの資金のことです。
塾の規模や立地、設備などによって異なりますが、一般的には200万円前後が目安とされています。
初期費用の内訳は、下記が挙げられます。
- 教室の家賃や敷金・礼金
- 教室の内装や改装
- 教材や教具・備品
- パソコンやプリンター・インターネット回線
- 広告や看板・チラシ
なお、初期費用は開業時に一括で支払う必要があるため、開業前に準備してください。
また、開業後に予想外の出費が発生することも踏まえて、数百万円程度は余分に用意しておくと良いです。
運用費用
塾開業後は塾を経営するための運用費用も必要となります。
塾の規模や人件費、消耗品などによって異なりますが、一般的には月額で数十万円程度の運用費用が必要です。
運用費用には、下記のものが含まれます。
- 塾講師や経営者に支払う給料
- 消耗品の買い足しや修理・メンテナンス
- 光熱費や通信費・水道代
- 税金や保険・会計士報酬額
運用費用は開業後から毎月発生するため、収入と支出のバランスを見ながら管理しておくと安心です。
学習塾の開業事例
学習塾の開業事例として以下の3つを紹介します。
- 会社員が塾を開業した事例
- 専業主婦が学習塾を開業した事例
- 教員から学習塾を開業した事例
これからの塾開業を目指す方はぜひ参考にしてください。
会社員が塾を開業した事例
会社員として働きながら個人学習塾を開業した方もいます。
会社員と並行しながらということもあり、自宅を教室とした少人数制の塾として経営をスタートしました。
個人学習塾は自宅をうまく利用することで、コストを抑えて開業することが可能です。
教育や学習指導に関心のある会社員の方は、副業として塾経営を始めることができます。
このように、学習塾の開業は会社員の方でも可能です。
専業主婦が学習塾を開業した事例
専業主婦から学習塾を開業した方もいます。
専業主婦として子育てをする中で、子どもと関わることの楽しさに気づき個人学習塾を開業しました。
自身の子どもを育てた経験から子どもへの接し方や教育の仕方がわかる点が大きな強みとなります。
子どもたちに寄り添い彼らの成長を支えることに情熱を持った指導を行えることも専業主婦経験がある方の強みです。
このように専業主婦の方でも学習塾の開業は可能です。
教員から学習塾を開業した事例
教員から独立して学習塾を開業された方もいます。
公立中学校で教員として教えているときに、低学力層の生徒が授業についていけない現状に衝撃を受けた経験から低学力層向けの学習塾の開業を決意しました。
現在、学習塾では生徒の基礎力向上や自立学習の促進に重きを置き、生徒1人ひとりに目標設定や進路相談などのサポートに力を入れています。
実際の教育現場で見た課題を塾経営として活かせる点が教員経験のメリットです。
学習塾の開業は教員経験がある方にもおすすめと言えます。
塾の開業に関するよくある質問
最後に、塾の開業に関するよくある質問に対して回答します。
- 塾を開業する時に生徒集めはどうする?
- 塾を開業するために資格は必要?
- 塾開業に必要なものは?
それぞれ役立つ情報なので、ぜひ確認してください。
塾を開業する時に生徒集めはどうする?
塾を開業するときの生徒集めは、塾に適した集客方法を検討する必要があります。
個人学習塾では、看板やチラシなど個人塾のコンセプトをうまく伝えられる戦略がよく用いられます。
また、口コミや紹介など既存の生徒から新しい生徒を獲得する方法も有効です。
生徒集めは地域や対象層によって異なるので、塾に適した方法を検討してください。
塾を開業するために資格は必要?
塾の開業に特別な資格は必要とされず、誰でもスタートできます。
ただし、資格を持つ講師を雇う方が講義力の保証となり生徒や保護者からの信頼も得やすくなります。
また、教員免許やTOEICなどの資格も講義を行う上で有利です。
参考:塾の開業に資格は必要?塾の集客・マーケティングで有利になるおすすめの資格9選!
塾開業に必要なものは?
塾の開業時には、教室となる建物や教材などの準備が必要です。
建物は賃貸でも購入でも良いですが、立地や広さ、設備などを考慮して決めてください。
教材は市販のものを使う場合もありますが、自分で作成することも可能です。
初期費用に加えて、生徒が集まるまでの運用費用として200〜500万円程度の資金を用意しておくと安心です。
個人塾・私塾の開業時に必要な教材をどのように選べば良いか気になっている方は、以下の記事を参考にしてください。
参考:個人塾・私塾の開業は教材選びが成功のカギ!教材選びのポイントを解説!
個人塾開業の流れを理解して塾経営を成功させよう!
個人学習塾の開業は、自分の教育理念やスタイルを実現できるなどメリットが豊富です。
ただし、少子化や大手学習塾との競争など難しさもあるため、塾経営を成功させるためには綿密な事業計画を立てることが求められます。
個人塾開業は楽な道ではないですが、準備と努力を怠らず、自分の強みや特色を活かせば成功する可能性は十分にあります。
また、個人学習塾の経営をする上で、コストの削減やIT化は必須です。
しかし、開業したばかりの個人塾はコストの削減やIT化がうまく進められないケースがあります。
そのような場合にはスポット指導アプリmanaboの導入がおすすめです。
manaboを導入することで、生徒の質問に対して24時間365日、幅広い科目と高いレベルでの対応が可能となります。
manaboの導入により、生徒はいつでも丁寧な学習指導が受けられ、塾としても講師の採用コストを抑えながら業務の効率化が図れます。
塾やコスト削減、業務の効率化を進めたい学習塾経営者様はぜひお問い合わせください。